住民基本台帳人口移動報告を見て

総務省統計局は、人口の移動状況を明らかにするために、住民基本台帳人口移動報告というものを作成している。1月29日に2020年の集計結果が公表された。
それによれば、2020年の日本国内における市区町村間移動者数は前年比2.7%の減少、都道府県間移動者数は前年比4.1%の減少、都道府県内移動者数は前年比1.5%の減少と、何れも前年より減少しており、特に5月の移動者数は過去最大の減少幅(何れも約2~3割減)となっており、コロナの影響が人の移動にもブレーキを掛けた事が伺える。

そんな中で、転入超過となっている都道府県は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県、沖縄県、滋賀県の8都府県に留まるが、転入超過数が最も縮小しているのは東京都で、前年比で5万1,857人縮小した。特に東京都は、5月に転出超過に転じ、7月以降毎月2,500~4,600人の転出超過を続けている。

この数字だけを見ると、原因はどうあれ、東京一極集中に転換点が訪れたかと喜ばしくも思えるが、そう単純でもない。

東京都から目を東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に転じると、まだ転入超過が9万9,243人という状況だ。転入超過数自体は前年比4万9,540人の縮小と、減少傾向にはあるものの、東京都を転出した人の多くは近県に留まっていることが読み取れる。また、東京都の中でも特別区部を見ると、1万3,034人の転入超過となっている。これは、市町村で見ると、大阪市の1万6,802人に次ぐ2番目の転入超過数だ。ちなみに第3位は横浜市で、1位の大阪市と3位の横浜市は、前年よりも転入者数が伸びている。

また、2020年はコロナの影響が大きく、前向きな地方移住を後押しした面もあるものの、後ろ向きな東京脱出、生活苦からのUターンなども散見され、まだまだ手放しで評価することはむつかしい。そもそもまだまだ地方に魅力のある居住地、働く場が乏しいことも問題だ。

さはさりながら、このような統計が出てきたことの意義は大きく、これは時代の転換点と受け止めたい。このトレンドをさらに勢いづけるべく、大企業には働く場所の分散、地方移転や、リモートワークの一層の推進をお願いしたい。また、地方での魅力あるまちづくり、仕事づくり等、みんなの力で取り組んでいければと思う。

東京一極集中の転換点

昨年は新型コロナウィルスの影響もあり、東京都の人口が転出超過という異常事態(?)が続いている。
人口移動の変化は第2段階(日経電子版)

記事によれば、第1段階は東京への転入の減少から始まり、第2段階として東京からの転出増加が続いているという。我々もこのような動きを予想し、地方への人材紹介やテレワークの推進を進めつつあったが、世の中は一歩先に動き始めたようだ。

この一年は新型コロナウィルスが攪乱要因となっているが、東京からの転出超過の動きはコロナが無くても起きた構造変化かもしれない。今後の動きはまだ読めないが、ひょっとすると昨年は東京一極集中の大転換点の年になったかもしれない。

地方創生の一大ミッションである東京一極集中の是正、これが図らずもコロナ禍に背中を押された格好になりそうだ。